肉眼・臨床解剖部門

献体について

久留米大学「りんどう会」会長挨拶

『りんどう会』~献体運動に捧げて~

 私は、久留米大学医学部の献体の会である『りんどう会』の会長で山木宏一といいます。私で5代目の会長になります。
この「献体」とは、大学医学部や歯学部,医科大学および歯科大学の解剖学実習に無条件無報酬で供されるご遺体のことであります。 今日まで久留米大学に献体された多くの方々に敬意を祓うとともに、安らかにお眠りされていることを願っています。
久留米大学りんどう会の歴史を顧みますと、初代会長である故竹重順夫名誉教授(第4代篤志解剖全国連合会々長)は、篤志解剖 全国連合会々長として献体法制化の実現にむけ関係各方面との折衝や陳情にご尽力され、その結果、それまでの「死体解剖保存法」 (1949年制定)に加えて、昭和58年5月に衆・参両院の本会議で「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」(献体法)が 成立したのであります。 この法律により全国の大学の医学部および歯学部の解剖学実習が社会的に認められ、さらには篤志献体の社会的意義が広く理解され、 献体の輪が拡がっていきました。2代目会長時代のりんどう会総会は現在の大学本館3階で行われていました。 その頃の私は解剖学の助手として総会に参加させて頂き、出席された会員の方々のお世話をしながら、会員の皆様の入会動機を 伺い感動したことを今でもよく覚えています。まだその頃は総会出席者も30名から40名くらいで全員のお話を聞くことができました。 その後、会場を学外に変えてからは100名以上の会員の方が総会に参加されるようになり、新入会員の方のみ入会動機などを伺っています。
この「りんどう会」は崇高な御心の方々でつくられる会であります。私は入会して10年くらいにしかなりません。いつの日か久留米大学 にからだを捧げて、医学生のお役に立てることが社会貢献に繋がるものであると信じています。その日まで毎日健康に気をつけて、 この献体運動を拡げていきたいと思っています。



久留米大学「りんどう会」会長
久留米大学名誉教授
山 木 宏 一

献体とは

 医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することをいいます。
「自分の死後、遺体を医学・歯学の教育と研究のために役立てたい」と志した人が、生前から献体したい大学またはこれに関連した 団体に名前を登録しておき、亡くなられた時、遺族あるいは関係者がその遺志に従って遺体を大学に提供することによって、 はじめて献体が実行されます。

献体の意義

 ~より良い医師・歯科医師の育成~
今日ほど「医の倫理」が強調され、「良医」の育成が強く要望されている時はありません。
医学生・歯学生は、「解剖学実習で、自分の身体を使って十分に勉強して良い医師・歯科医師になってください。」という願いを 込めて献体された御遺体によって学習することにより、人体の解剖学の知識を習得すると同時に、献体に対する感謝の気持ちと、 その期待に応える自覚と責任感を涵養します。
献体の最大の意義は自らの遺体を提供することによって医学の教育・発展に参加し、次の世代の人達に役立つために、学識・人格 ・技量ともに優れた医師・歯科医師を養成するための礎となることにあります。医学教育は医学・歯学の学生のみに必要なのでは ありません。医師・歯科医師はじめ看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・歯科衛生士・歯科技工士などのコメディカル と呼ばれるチーム医療を支える医療人を育てるためにも、解剖学実習が求められています。また、医師や歯科医師がより優れた医 療を提供するためにも献体を活用した解剖学の教育・研究が求められています。日本の医療水準を更に高めるために献体者のご理 解を願う運動が始まっております。

解剖の種類と献体

解剖には、大きく分けて次の3種類があります。
1. 正常解剖:人体の構造を調べるための解剖
2. 病理解剖:病変を調べるための解剖であり、死後すぐに行います。
3. 法医解剖(または司法・行政解剖):変死体の死因を調べるための解剖

献体に直接関係があるのは、1.の正常解剖であり、医学教育や歯学教育の基礎と言われています。

献体登録(入会)をするには

 献体をご希望の方は、久留米大学「りんどう会」へお申し込み下さい。具体的な申し込み方法は、久留米大学医学部事務部庶務課 (電話番号0942-31-7527)にお問い合わせください。申し込み先は大学病院ではありません。
なお、登録には肉親の同意が必要となります。病気や障害、手術を受けられた方も献体することが出来ます。

献体を実行するには

 献体登録者(会員)が死亡された時、献体のための手続きを実際に行うのはご遺族あるいは身近な方となります。
 ご遺族の方は、久留米大学医学部へまず電話でご連絡下さい。その際、告別式の日取り、その他のご遺族側の予定、 希望なども含めて、ご遺体の引き取りの日時や手順を大学側と相談して下さい。
 通夜・告別式など、通常の葬儀を行うことは、献体するうえで少しも障害とはなりません。 通常葬儀のあと、ご遺体は出棺して火葬場に向かうことになりますが、献体される場合は出棺後に大学に運ばれる点が異なります。

ご遺骨返還の時期と方法

 献体された後、ご遺骨がご遺族に返還されるまでの期間は、3年程度です。 ご遺体は、解剖学実習終了後に一体ごとに大学側で丁重に火葬した後、ご遺骨をご遺族にお返しいたします。さらに、献体された方々のために毎年5月頃 大学の公式行事として解剖体慰霊祭が行われています。

※このページに記載された内容は公益財団法人 日本篤志献体協会発行の「献体とは」に基づいています。